カテゴリー「書籍・雑誌」の46件の記事

2013/04/13

読書録:近藤好和「弓矢と刀剣」「騎兵と歩兵の中世史」

 有識故実の研究家である著者が、前者では「今昔物語」、「平家物語」(源平盛衰記を含む)を中心とした軍記物と関連する絵巻物を対象に、後者では「太平記」とその時代の絵巻物を中心に、武者のいでたち(著者は文中で「行粧」と表記)や、振る舞いを拾いながら、中世の合戦がどのように変化していったのかを読み取る、という2作。

 個人的に仕事で刃物に関わることが多く、特に伝統的な打刃物となると、まわりに日本刀を作刀しておられる方はいないのだけど、やはり興味を持つ側の人たちは、日本刀との関連性に興味を持たれたり、間違った知識を植え付けられていたり、で、まあまあ、さらっとは日本刀のことも知っておいた方がいいんだろう、というのが読んでみた動機です。

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2013/02/24

読書録:ガーシェンフィールド「 Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ」

 いよいよ日本でも実験室や工場向けから一般家庭向けが流通しつつある3次元造形機を中心に、素人でも誰でもが自分に必要なものを作り出すことができる世界を書いた本で、原著は実験室レベルから出つつある2005年に書かれたもの。

 中盤では、個別技術について、樹脂を使った3次元造形機の他にも、かなり細かく、さまざまな技術を紹介しているんですが、あんまり目新しさがなくて退屈だなーと思ったのは、自分が機械工学科卒で、3次元CADを研究する研究室に在籍し、今も地方の中小製造業の人たちと付き合う生活をしている、という特殊要因によるところが大きく、多分、文系の人だったり、美大に通うような加工技術に明るくない人たち、たとえば、高校生とか大学生向けの教科書として考えると、大変、丁寧な書籍だと思いました。 ※まあ、逆に自分としては、サザランドの名前とか出てきて超懐かしい!って感じもありましたが。

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2013/02/11

読書録:今野晴貴「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」

 大学で労働法を専攻しながら関連NPOで労働法関連の相談を行ってきた、という著者の経歴からすると、仕方がないのかもしれないが、法規制によってブラック企業を取り締まる、という主張に中々、同意できない部分がありつつ、読み進めた。

 著者が指摘するように、現時点で労働法は交通法と同じくらい遵守が不可能な法体系になっていて、日本の企業はすべてがブラック企業になりうる可能性を持っている中、意識的、戦略的に法の網目をかいくぐる企業が増える一方なのだから、法規制を強めたところで、脆弱な企業の労務管理コストがかさむ一方、真のブラック企業は対策を立てるだけだろう、と。

 たとえば、著者は、対策の一例として、欧州では退社後11時間以内の出社が認められない、と紹介するものの、日本で今、同じことをやったら、持ち帰りの残業が増えるだけ、というのは想像に難くないし、書中でも紹介があるように、守秘義務とかの関係を考えると、単純に仕事を持ち帰るための新たな仕事を生むだけだと思うんだがね。
 公的な職業訓練を充実させるべき、とか言っても、それって今、普通にやったら、書中でも批判されてる希少価値の少ない資格試験の保有者を増やすだけで、一層、使い捨てを増やすだけな気もするしね。

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2013/01/26

読書録:朝河貫一「日本の禍機」

 この1年くらい、負けると分かっていた太平洋戦争の開戦に至るまで(と、その後の和平交渉)における、日本の政策決定に関する本として、以下の各書を大変、興味深く読んだ。

 川田 稔 「昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐」(amazon
 森山 優 「日本はなぜ開戦に踏み切ったか: 「両論併記」と「非決定」」(amazon
 片山 杜秀「未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命」(amazon

 これらの本で、興味深いのは、対米開戦の歩みは、日露戦争の勝利によって、もたらされた、という視点で、これは、まあ、歴史の連続性を考えれば、当たり前のことなのだけど、中国大陸に守るべき領土を持ってしまった、その保護のため一定の陸軍力を必要とした、そして大国相手でも信念と気合いで勝てる、という間違った認識を持ってしまった、というのが全ての悲劇の始まりだ、という考え(もちろん、その後、何度も修正の機会がありながら、修正できなかった体たらくも大きな敗因ですが)。

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2012/12/31

読書録:荻上チキ「彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力」

 社会福祉の対象としての売春婦、という視点にひっかかったのは、次のブログ・エントリを読んだときだった。

 生活保護とシングルマザー - キリンが逆立ちしたピアス (id:font-da)

 ちょうど、今年の6月くらい、生活保護者への世間の風当たりが強くなっている頃。
 このエントリを読んでの感想としては、おそらく、ここで紹介されているような女性に現実世界で知り合って、このような発言をされたら、まったく同情も共感もしないだろう、ということ。それでも、あるいは、それだからこそ、彼女たちには公的な支援が必要なのだろう、ということ。
 自分が個人として、彼女たちを支援したいとは思わないし、おそらく、世の中の大半の人がそう思うのだろうけれども、でも、彼女たちが一人の人間としてこの世に生きている以上、その不幸を連鎖させないためには、誰かが助けなければならないだろうし、その助ける行為に税金が突っ込まれることは、まったく否定すべきじゃない。
 それを偽善と言われようが、独善と言われようが、自分の手で助ける気にはならないけど、他の誰かが助ける、というのなら、その手助けくらいはできるだろう、と。

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2012/09/30

読書録:ペトリ・サルヤネン「白い死神」

 1939年冬、ドイツ軍のポーランド侵攻によって火ぶたが切って落とされた第2次世界大戦――その混乱に乗じて、ソヴィエト連邦は、ロシア革命に際して独立を許したフィンランドの回復を狙って、フィンランド国境に迫る。いわゆる、「冬戦争」。

 ソヴィエトに対抗するフィンランドは、スウェーデンの中立主義により、英仏連合軍の支援も受けられず、先の独立戦争時と同様、ドイツを頼って枢軸の一翼を担わざるを得なかった。その結果、戦後、敗戦国となったために、国際的にはもちろん、国内でも、あまり評価される機会のなかった冬戦争の英雄的射撃手、シモ・ヘイヘ(現地発音では、ハユハに近い)に迫る伝記小説。

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2012/09/28

読書録:板谷敏彦「日露戦争、資金調達の戦い」

 川田稔「昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐」(amazon)、森山優「日本はなぜ開戦に踏み切ったか: 「両論併記」と「非決定」 」(amazon)を読んだ後、第2次大戦前夜における開戦の意志決定モノとしては、片山杜秀「未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命」(amazon)も読んでいるのですが、イマイチ、腑に落ちないことも多く、もう少しマトメてから感想を書こうと思っていたら、すっかり詳細な内容も忘れてしまった、という。。。

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2012/08/12

読書録:森山優「日本はなぜ開戦に踏み切ったか」

 第2次大戦前史ものとしては、前に読んだ川田稔「昭和陸軍の軌跡」が、なかなか興味深くて、自分の中で整理してから、ここに感想を書こうと思っていたら、結局、放置してしまっている。

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2012/08/04

読書録:池井戸潤「「ロスジェネの逆襲」

 「下町ロケット」(感想)で直木賞を受賞した池井戸潤の受賞後第1作(実際には受賞の前後に「週刊ダイヤモンド」に連載されていたもの)。
 バブル期に大手銀行に入行したらバブルが弾けて業界の大危機なのに、組織の論理を振りかざす連中ばっかりで、どんどん地盤沈下していく中、主人公、半沢の奮闘を描く、都銀出身という著者の強みを活かした「オレバブ」シリーズの3作目ということです。ま、前2作は読んだことないんだけど。

 今作の場合は、出世街道からハズされた左遷先の子会社の証券会社で、IT企業同士の買収劇・・・というちょっと前のライブドア事件あたりに構想を得たのかなあ、という内容。
 あくまで銀行小説なので、IT企業そのものの経営戦略とかは、さらっと流す感じで、時代が違えば、IT会社以外のどんな企業でも当てはめられそうなところを、前向きに評価するのか、浅いとみるかは個人差が出そうです。
 善悪の対立を分かりやすくするために、小者をあくまでも小者として描いて、そこに人間性を感じさせなかったり、しかし、通俗小説としては、敵ながらあっぱれという強力な敵もあまり出てこない、といった辺りは「下町ロケット」と同様で、これはもう作者の作風なんでしょう。まあ、あっさりしてて読みやすい、という点では評価できると思いますが。

 組織の中で自分の顧客と自分の仕事をまっとうすること、という点ではサラリーマン小説として、よくできていると思いますし、多くの方に勇気を与えるのではないかと思いました。

ロスジェネの逆襲
池井戸 潤
ダイヤモンド社 ( 2012-06-29 )
ISBN: 9784478020500

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2012/07/22

読書録:北川智子「「ハーバード白熱日本史教室」

 カナダの大学で理系学部をダブルメジャーで卒業した後、たまたま日本人ということで手伝っていた日本史教授の専門に興味を持って、日本史学に転向、プリンストンでドクター取った後、20代でハーバードの講師に、というハイパーな経歴の女性。

 経歴だけでなく、学問に対する取り組みも、書かれた内容から伝わってくる範囲で想像するに、相当ハイパーな人と思われる。

 文系の講師でペーパーをそれなりに書く日常なのかもしれないけど、高校卒業以来、北米で生活している割に、日本語の文章も、文体・構成とも、非常に読みやすい。

 amazonのレビューで鬼のように低評価してる人たちがいるけど、国内で冷や飯食ってる史学関係者か何かなんですかね。
 確かに、彼女は日本国内で専門的に日本史の研究した人じゃないし、歴史認識等で甘さがあるのかもしれませんけど、これは学術論文ではないし、そこに紙幅を割いていないので、非難するほどのものか。
 さらに、彼女のハーバードでの授業の方針も日本史専攻の学生向けではなく、あくまで、選択科目としてこの先も日本に関係するかどうか分からない学生たちが対象で、この授業を機会に日本史に興味を持ってもらって後の人生に何か役に立てばいい、というスタンス、であれば、まあ、こんなもんじゃないのか、と。
 歴史学者として評価できるかどうかは、彼女の学術論文を読んだり、その論文の学会での評価をみないと分からないんじゃないですかね。

 歴史の本ではなく、若い日本人女性がハーバードで講師をしている、というストーリーとしては大変、面白く読めました。文系大学の講師を目指す方、海外大学への進学、就職を目指す方などには、大変、参考になるかと思います。

 あと、タイトルは編集者が付けたんだろうけど、これだけ才能がある人だったら、自分で付けさせても良かったんじゃないですかね。まあ、ほぼ無名の人が世の中で気付かれるには、こういうタイトルで耳目を集める必要があるのかもしれないですけど、不要な叩きに合う要素な気もします。

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