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2013/01/26

読書録:朝河貫一「日本の禍機」

 この1年くらい、負けると分かっていた太平洋戦争の開戦に至るまで(と、その後の和平交渉)における、日本の政策決定に関する本として、以下の各書を大変、興味深く読んだ。

 川田 稔 「昭和陸軍の軌跡 - 永田鉄山の構想とその分岐」(amazon
 森山 優 「日本はなぜ開戦に踏み切ったか: 「両論併記」と「非決定」」(amazon
 片山 杜秀「未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命」(amazon

 これらの本で、興味深いのは、対米開戦の歩みは、日露戦争の勝利によって、もたらされた、という視点で、これは、まあ、歴史の連続性を考えれば、当たり前のことなのだけど、中国大陸に守るべき領土を持ってしまった、その保護のため一定の陸軍力を必要とした、そして大国相手でも信念と気合いで勝てる、という間違った認識を持ってしまった、というのが全ての悲劇の始まりだ、という考え(もちろん、その後、何度も修正の機会がありながら、修正できなかった体たらくも大きな敗因ですが)。

 そこで、日露戦争そのものを記述した書籍として読んだのが次の本。

 板谷 敏彦「日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち」(amazon

 タイトルのとおり、戦争そのものではなく、その遂行に不可欠な軍資金獲得を追っているのだけれど、その中で欧米、特にアメリカの金融家がいかにして日本を支援し、最後にはロシアの同盟国フランスでさえ、日本支持に回ったか、という当時の世界観も興味深い。

 で、この4冊のどれだかで紹介されていたのが、この朝河貫一の「日本の禍機」。書かれたのは、日露戦争終結後、間もなく。朝河は在米の法制史学者で、日露戦争最大の支援国だったアメリカの世論の変調を現地で感じ取り、日本人に向けて真摯な反省を促しているもの。

 同書での朝河の指摘は、アメリカ世論の対中国政策は、大きく変化した訳ではなく、日露戦争前と基本方針は変わっていない、というもので、その方針とは、当時、清朝が崩壊寸前で大きく民主化に傾きかけていた中国に対して、中国の主権を認め、その中で門戸開放を進めて諸外国による自由競争経済を進めよう、というもの。
 義和団の乱に乗じて、ロシアが中国での利権を拡張しようとしていたのを日本が阻止した戦争だったからこそ、アメリカはこれを支援したのであって、戦後、日本は戦前のロシアと同じ行為に踏み出しており、これではアメリカの理解は得られない、と。
 もちろん、朝河も、ここに一定のアメリカの都合が含まれていることは認めていて、つまり欧州列強と日本が中国に租借地を持って利権を拡張している中、アメリカは出遅れているし、一方で、西海岸にフロンティアが達し、ハワイ、フィリピンを併合したアメリカにとって、アジア利権の重要性が高まっている、というアメリカの本音も指摘している。
 ただ、この時点で既に30年後に問題となる、アメリカの主張がキレイゴトだからと言って、はねのけられるのか、アメリカを敵に回して戦争に勝てるのか、キレイゴトであってもそこに一定の真理がある以上、真摯に向き合う必要があるのではないか、そこでアメリカの虚飾がはがれたときに欧州各国と共にアメリカと対峙すればよいのではないか、と朝河は主張する。

 日露戦争直後に懸念された歴史を辿って30年後に大敗北する日本ェ。。。

 ちなみに、この辺を読んでいて、世界史を勉強するのに、年号を知ってるって意外と大事だな、と思いましたw で、ちょこっと事件関係、整理。

1889 アメリカ、フロンティア消滅
1894-1895 日清戦争
1895 三国干渉
1898 米西戦争、ハワイ併合
1899 米比戦争開戦
1899 第1次門戸開放通牒
1900 第2次門戸開放通牒
1900 義和団の乱
1902 日英同盟締結
1904-1905 日露戦争
1906 鉄道国有法発布、南満州鉄道設立
1907 三国協商成立(英露仏)
1908 日米移民紳士協定締結、タフト大統領選出、西太后没、「日本の禍機」上梓
1909 伊藤博文暗殺
1910 韓国併合
1911 辛亥革命
1912 中華民国建国

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