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2013/01/27

僕の考えた芸術的価値の歴史的変遷につて

 なんつうか、ちょっとネット調べたら、色んな事実関係が整理できそうなんだけど、めんどうなので、特に調べ物もせず、勢いだけで書く。

 (特に西洋古典音楽や、西洋絵画を嗜好してる人たちなんかには顕著なことに)芸術的価値が普遍だと思ってる人は多くて、現存する偉大な作品は発表当時から偉大で、逆から見ると、作品が伝わってない地域や時代には、大した作家はいなかった、というような風潮は現実に存在するように思う。
 いい作品は、いい作品だから残ってきたのであって、残ってない作品は大したことないんだ、と。

 じゃあ、いい作品のいいって何ですか? 売上ですか? 権威による評価ですか? 旋律ですか? 和声ですか? 拍子ですか?

 人がいいって感じる要素自体が時代によって全然、違っているんじゃないですか? という話。

 まあ、別に古典ど真ん中でもモーツァルトとサリエリとか、絵だったらゴッホとか(同時代の有名人て誰?)、実例を枚挙することはできるのだろけど、ちょっと遠い昔過ぎてリアリティがないので、もう少し現代に近いところで考えてみる。

 自分は1977年生まれなので、当時の実態がどうだかは、さっぱり分からないんだけど、一応、日本の洋楽ロック史を語る上では、つうか、世界のロック史上、1977年といったら、Sex Pistolsが、God Save The Queenをリリースした年である。もっとも、BBCによる放送禁止とかあって、リリース第1週のチャートで1位だったのは、ロッド・スチュワートらしいんだけど。
 多分、ロック音楽が隆盛する限り、1977年は、Sex Pistolsの時代だと記憶され続けるのだろけど、でも、実際、当時のSex Pistolsって、本当に時代を変えるくらいのインパクトがあったかって言うと、多分、瞬間最大風速的な存在ではあったとしても、そもそも彼らの活動期間があまりにも短くて、一発屋で消えた可能性はあると思うんですよね。
 何が彼らを偉大たらしめてるかって、Clashみたいな後続バンドが出てきて、その中で短期間で消えたことが、逆に神秘化、神格化させたってのが、あるんじゃなかろうか。

 そもそも、今みたいにインターネットもない、海外渡航する人も多くない時代に、日本国内で言ったら、Sex Pistolsなんて、どれだけ聞かれていたんだろう? 文化の主流がテレビの時代に。まあ、雑誌とレコードの組み合わせで、意外にそこそこ聞かれていたのかもしれないけれど。

 でも、ハードロック関係の雑誌、書籍を読むと、当時、「ハードロック四天王」と呼ばれて、Aerosmith、Kiss、Queen、Cheap Trickが評価されていたようで、少なくとも前3者はテレビでライヴ映像が流れたりしてたようだし、その年代の普通のオッサンとかに聞いても、知名度はあるっぽい。Cheap Trickだって、日本武道館のライヴ音源で北米に逆輸入されたくらいだから、日本国内では、そこそこ人気があったんだろう。
 ところが、Aerosmithは、80年代末のLAメタルブームの衰退していくタイミングで、ゲフィンから復活して、第一線に留まることができたし、Queenもフレディ・マーキュリーの悲劇的な死によって記憶を止めたけれど、少なくとも欧米におけるKissの人気に比べると、日本でのKiss人気なんて、当時のオールド・ファン以外、全然、残ってないように感じる。
 むしろ、Cheap Trickの方が、パワー・ポップの始祖として、次の時代に確かな影響を与えたことで、現役バンドが好きな昔のバンド、として一定の評価を得ている気すらする。
 ※実際、当時を知らないうちらより下の世代のファン数で、KissとCheap Trick、比べるとどんなか予想もつかんけど、、、ま、Kissは音楽以外での評価もありますからね。

 で、この時代、北米の人気はパッとしなかったけど、Rainbowもライヴ映像がテレビで流れたりしてたらしく、彼らもまた同系統の偉大なオリジンとして、一定の評価をいまだに得ている。
 Black Sabbathも同様。いや、サバスの場合は、むしろ、ピストルズに近くて、その後、オジーがアメリカでヒットしたこと、その後、グランジ・ブームや、オズフェストの開催によって、「キッズに人気のラウドなバンドをやってるメンバーがキッズの頃に感動したバンド」という地位を得たことで、再評価されている面もあると思う。
 ※それをシャロン・オズボーンは、戦略的にやってるんだから、すごい人ですよ。

 で、こういう、1970年代後半の音楽事情を考えたとき、いつも、引っかかるのは、ベイ・シティ・ローラーズってのは、何者なんだ? ということですよ。テレビの懐メロ番組とか見ると、当時、圧倒的な人気を誇っていたハズなのに、音楽雑誌の70年代特集みたいなのには、一切、出てこないので、その系譜が今、どう引き継がれて、歴史上、どこに位置するのかも不明な、特異点のような扱いに自分の中ではなってるんですが、でも、どう考えても、すげー人気というか、下手すると、ここまで挙げたどのバンドよりも知名度も売上も人気も、あったんじゃないの? という。

 まとめよう。

 文化的価値、というものを歴史の流れの中で考えたとき、同時代人にどれだけ評価され、どう支持されたかは、あまり関係ない。それよりも、次の時代の創作者たちに影響を与えたものが評価される。もちろん、同時代で評価されれば、それだけ次代の人間も多くが聞いているのだから、後世の評価を得る可能性は広がるのだろうけれど、創作者たちに作風が継承されないと、徐々に忘れられていく。
 どの程度の時代を経ると、伝説化し、神格化されるのかは、分からない。2世代くらいを耐えれば、だいぶ風化しづらくなるのか。また、バッハが死後、マニアの自家用音楽からメンデルスゾーンによって引き上げられたように、Cheap Trickのような狭い範囲で影響力を確実に伝えているバンドは、2~3世代後に急に復活する場合もあると思う。まあ、AerosmithやBlack Sabbathは、下の世代が評価してくれたときに、自分たちがまだ現役で、そこそこ時代にフィットした音楽を作れた、というのは大きいよね。

 まあ、この辺も、印刷機がようやく出回り始め、教会と宮廷の権力が、資本と民主主義に移っていった時代と、写真、そして映画、レコード、ラジオ、テレビの時代、さらに、これからのWebの時代では、そもそも、「評価の伝播」の様相がだいぶ変わってきているので、100年後に知名度がある現代のミュージシャンが誰かって言うのは、我々には予想もつかないですよね。  

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