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2012/01/02

読書録:東浩紀「一般意志2.0」

 一度読んでみて、あまりスッキリと腑に落ちなかったので、2度読んでみたのだが、結局、あんまりよく分からなかった。現代思想や政治思想、西洋哲学の世界では当然のこととして理解されている共通事項の理解が足りないせいかもしれない。

 副題に「ルソー、フロイト、グーグル」とあるように、まず著者は、ジャン・ジャック・ルソーの社会契約説を紹介する。
 そこで語られる「一般意志」という概念は、いわゆる「世論」を意味する「全体意志」とは区別され、「全体意志」が総意の平均であるのに対して、「一般意志」は総意の総和そのものである、と解説する。均された総意ではなく、ちらばりも含めた総意としての「一般意志」。それは従来、空想の産物と考えられてきたが、現代では、それに近いものを知覚可能だと著者は主張する。

 それは、インターネット上に次々と記録されていく、人々の言動をグーグルが行うように集約することによって得られる。

 それは、「全体意志」が社会全体の「意識」だとすれば、「一般意志」は社会全体の「無意識」と見ることができる。そして、個人が無意識を無視したり、逆に無意識の奔流を放置したりすれば人生が破壊される、とジークムント・フロイトが説くのと同様に、社会も無意識たる「一般意志」だけに従う必要はないが、「一般意志」を無視するべきではなく、無意識を理解しようと努め、意識と無意識との融和を図らねば、健全な発展はない、という。

 なぜならば、近代の西洋政治思想は対話による合意形成を重視してきたが、いまや交通手段と通信手段の発達により人が生きる世界は広がり(地球は狭くなり)、対話が成立するための条件となる、基礎的な価値感の共有基盤を持たない相手とも、共通の課題を解決せねばならないから。また、その一方で、ごく近くにいる隣人との共有基盤も分断され、そこに対話は成立しないから。

 ・・・著者の主張を自分なりに理解しようとすると、多分、こんな感じ、というか、少なくとも、ここまでは理解できたつもり。
 著者の現代社会における深い絶望と、それを乗り越える手段としての「一般意志」の活用、従来の視点から視点を切り替え、全く新たなアプローチで隣人の存在を肯定しようと努める姿勢は、伝わってくる。

 ただ、もともとが長期間の連載をマトメたという性質のためか、あるいは著者が指摘するように、「3.11以降」という視点のズレ(読者の、あるいは修正は最低限にとどめたという著者の)のためか、著者が指摘する「一般意志2.0」をどのように知覚し、それを判断に活用していくか、という具体の方法論に入ると、全く理解できない。
 少なくとも、国会のような議論の場を中継しながら、ニコ動やツイッターで有権者がつぶやく、というのは、著者が目指そうとする、視点のダイナミックな転換と比較すると、あまりにも矮小な手段に思える。それが本当に我々を幸福にする選択肢をもたらす手段として有効に機能するのか、実感が持てない。

 この辺りは、著者が軸足を置く、西洋由来の現代思想の常識が私に伝わっていないせいなのかもしれない。つまり、理性や理知的な判断、合理的な判断というものの定義、それらの行為の意味や、その限界についての価値感が共有できていない。私は老荘を、浄土の教えを、ユングの世界観を信奉する者であり、世界の物理を見ようとする科学者の末席を汚す者であるから。

 一人一人が政治に参加し、理知的に議論を重ねていくには、世界は複雑になりすぎた。それは理解できる。それ故、ソクラテスは国家に殉じ、プラトンは民主主義を諦めたのだから(あー、すんません、「国家」はまだ読んでません)。

 しかし、結局、分断されていく世界の中で、一人一人がどのように生きてゆくべきなのか、世界の再統合は成されるのか、といった点について、著者の考えが、今のところ、あまり理解できていない。そのうち、もう1回、読み直すべきか。。。

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コメント

携帯ゲームの地位を高めたのはこやつのおかげでないかい?携帯ゲームと侮る無かれ

投稿: モバゲー | 2012/01/14 00:01

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